アメリカのセレブ奥様リアリティ番組出演スター、違法ブックメーカー、マネロンで解雇のラスベガス有名カジノ元社長との関係をマネロン対策、CAMS(アンチマネーロンダリング国際認定資格)が紐解く。
水原被告のギャンブル資金不正送金のからくり~第1回~
2024年5月8日にアメリカ大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手の銀行口座からのおよそ26億円以上の窃盗、不正送金を認めた元通訳の水原一平氏をめぐる「不正なお金」の流れはラスベガスのカジノまで及んでいる。
今回の水原氏の事件を発端に不正送金、不正ギャンブルブックメーカー、そして不正ギャンブル資金の送金先のラスベガス有名カジノなど関連者が芋づる式に浮上。
カジノ関連企業のマネロン対策、CAMS(アンチマネーロンダリング国際認定資格)の視点から大谷翔平の通訳の「一平ちゃん」と親しまれた水原被告のギャンブル資金不正送金のからくりとは?をシリーズにして紐解いていきます。
大谷翔平選手通訳の「一平ちゃん」と親しまれた水原被告のギャンブル資金不正送金のからくりとは?~第1回~
時系列でみる水原一平氏26億円不正送金事件
事件に絡む部分はカリフォルニア州中部地区連邦検事局のプレスリリースによる情報
♦大谷翔平選手との出会い2013年~
大谷翔平選手が日本ハム時代に、別の選手の日本語通訳をしていて大谷選手と知り合った水原一平氏。
その後大谷翔平選手がアメリカ大リーグ・ロサンゼルス・エンゼルスへ移籍の際、大谷翔平選手の通訳となる。
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♦大谷翔平選手の通訳の「一平ちゃん」2018年~
2018年ロサンゼルス・エンゼルス大谷翔平選手の専属通訳となる。周りから「Ippei」「一平ちゃん」と親しまれる。この頃、水原一平氏は球団からの雇用とは別に大谷翔平選手から給料を得てミーティングへの運転や、野球以外での通訳を開始。
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アメリカ連邦刑事局によると、水原一平氏は2018年アリゾナ州フェニックス(大リーグ春キャンプ地でもある)でMLBの給与が振り込まれる大谷翔平選手の銀行口座の開設を手伝い、銀行員が大谷翔平選手にこの銀行口座のログイン情報を教えたときにも通訳を行った。
<アメリカ事情> 他民族国家のアメリカ。一見セキュリティーがかたそう?な大手銀行であっても銀行口座開設時に「通訳」ですと言えば、同席を断られることはない。基本的に口座名義人の本人確認(パスポート提示など)ができればOK。その「本人」を信用して口座は簡単に作れてしまう。
♦違法ノミ屋(ブックメーカー)通して賭博 2021年9月
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2021年9月、水原一平氏は違法なブックメーカーでスポーツ賭博を開始。(カリフォルニア州ではスポーツベット(賭博)は違法)。その後まもなく、水原一平氏は賭けに負け始め、ブックメーカーに借金を負うようになる。
<アメリカ事情> アメリカは州によってゲーミング、賭博の法律が異なる。ラスベガスがあるネバダ州では合法のスポーツベットもカリフォルニア州では違法。車で州境を通過すればアプリは利用できない。水原一平氏の違法ブックメーカー(ノミ屋)もこうした違法州からのギャンブル掛け金の取次をしている。
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♦大谷翔平選手口座から違法送金はじめる 2021年11月
2021年11月前後から2024年3月にかけて、水原一平氏は大谷翔平選手のログインパスワードを使って銀行口座へアクセス、その後、大谷翔平選手の認識や許可なしに銀行口座のセキュリティ設定を変更。また、水原一平氏は口座の登録メールアドレスと電話番号を変更し、口座からの電信送金を確認しようとする際、銀行の従業員が大谷翔平選手ではなく自分に電話をかけるようにしていた。
また、水原一平氏は合計で約24回大谷翔平選手になりすまして銀行に電話。大谷選手の個人識別情報を使って銀行の従業員を欺き、銀行口座からの電信送金を承認させた。
♦なりすまし違法送金、歯科治療費騙しとる 2023年~
水原一平氏は定期的に大谷の銀行口座にログインし、違法ギャンブルによる借金の支払いとして、口座からブックメーカーとその仲間への電信送金を開始。例えば、2023年6月20日、水原一平氏は大谷翔平選手の許可なくブックメーカーの仲間の一人に50万ドルを送金していることが明らかになっている。
さらに2023年9月、水原一平氏は6万ドル(約900万円)相当の歯科治療が必要と大谷翔平選手に伝えると、大谷選手は自身が持つ別の銀行のビジネス口座の小切手で水原一平氏に治療代を支払うことに同意。しかし水原一平氏は、自身が開設を手伝い悪用していたアリゾナ州フェニックスで開設した銀行口座のデビットカードでその口座に6万ドルをチャージし、大谷選手から渡された6万ドルの小切手は自分の個人の銀行口座に入金した。
<アメリカ事情> アメリカの歯科治療は高額、高級エリア、セレブ相手の有名審美歯科などとなると1回の治療に100万円かかってもおかしくない。また、アメリカでは小切手もまだ一般的に使用されることがあり、支払い宛名義人が「CASH(現金)」「無記名」の場合だれでもその小切手を現金化できてしまう。
♦事件発覚までのカウントダウン 2024年1月~
2024年1月から3月にかけて、水原一平氏は大谷翔平選手の銀行口座からeBayなどのオンライン転売業者から約32万5000ドル(約4,900万円)相当の野球のトレードカードを購入し、後で転売して個人的な利益を得ることを意図していたという。
この間、大谷翔平選手のスポーツ・エージェントとファイナンシャル・アドバイザーが水原一平氏に銀行口座へのアクセスを求めたところ、水原一平氏は大谷翔平選手がプライベートな口座だからアクセスさせたくないと言っていると嘘を伝え、関係者からの大谷翔平選手の口座へのアクセスを阻止。
♦個人連邦所得税申告も虚偽申告 2024年2月~
また、2024年2月には虚偽の個人連邦所得税申告書を作成し、それに署名したことを司法取引の中で認めている。その確定申告書では、その年の課税所得総額を13万6,865ドル(約2,000万円)と偽っていたが、実際にはもっと高額であり、410万ドル(約6億円)の追加所得を故意に申告しなかったとしている。これについては、IRS内国歳入庁犯罪捜査部と国土安全保障捜査部がこの件を捜査している。
申告漏れの所得の源泉は、銀行と大谷翔平選手を欺いた違法送金によるものだった。
<アメリカ事情> 内国歳入庁(国税局)犯罪捜査部は、内国歳入法、銀行秘密法、マネーロンダリング法の違反容疑に関する犯罪捜査を行う。これらの調査結果は、起訴勧告のため司法省に送られる。確定申告の税申告漏れもこの歳入庁の捜査部の仕事。
♦銀行詐欺で起訴 2024年4月~
水原一平氏は、約1700万ドル(約17億円)を、大谷翔平選手が知らないうちに、あるいは選手の許可なく違法に送金したとして連邦刑事告訴により起訴された。
♦銀行詐欺で起訴 2024年5月8日
水原一平氏は、約1700万ドル(約17億円)を大谷翔平選手から銀行詐欺で盗み、違法なブックメーカーを通して行った多額のギャンブルの借金を返済した罪と、虚偽の納税申告書に署名した罪で、連邦刑事責任を認めることに合意したと、司法省が本日発表。今回の罪、最高刑は連邦刑務所30年の重罪でああり、近日5月14日に罪が言い渡される。
大谷翔平選手通訳の「一平ちゃん」と親しまれた水原被告のギャンブル資金不正送金のからくりとは?~第1回~事件のあらすじをおつたえしました。次回をおたのしみに